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もうもくものがたり
盲目物語
谷崎 潤一郎
「中央公論」1931(昭和6)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,341 字 · 148 页
身にはこゝろえがある、はかりごとをもって討つのはよいが、こちらを信じて来たものをだまし討ちにするのは道でない、のぶながゞ今こゝろをゆるしてわが領内にとゞまっているのに、そのゆだんにつけ入って攻めほろぼしては、たとい一たんの利を得てもついには天のとがめをこうむる、討とうとおもえば此のあいだじゅう佐和山においても討てたけれども、おれはそんな義理にはずれたことはきらいだと仰っしゃって、どうしてもおもちいになりませなんだので、遠藤どのもそれならいたし方がござりませぬが、あとでかならず後悔あそばされるときがござりますぞと申されて、またかしわばらへおもどりなされ、なにげないていで御馳走申しあげまして、あくる日無事にせきがはらまでお見おくりなされましたとやら。おくがたは此のいきさつをくわしくおきかせくださりまして、
「しかし遠藤の云ったことにも、いまかんがえれば尤もなふしがあるようにおもわれる」
と、そうおっしゃるのでござりましたが、そのときふいにおこえがふるえて、異様にきこえましたので、なにかわたくしもはっといたしてうろたえておりますと、
「一方がいくら義理をたてゝも、一方がたてゝくれなかったら