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もうもくものがたり

盲目物語

谷崎 潤一郎

「中央公論」1931(昭和6)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,341 字 · 148 页

青空文庫

日野じょうへとりつめてまいりました。勢州からは北畠中将どのがそれをすくおうとおぼしめされ近江路へ打って出られましたけれども、途中こゝかしこに一揆がおこってなか/\すゝむどころではござりませんので、一時はまったくどうなることかとおもっておりますと、やがて三七のぶたか公と五郎ざえもんのじょうどのと一手になって大坂へ馳せのぼられ、ひゅうがのかみの聟織田七兵衛どのを討ちとったと申すしらせがござりました。ひゅうがのかみもそれをきゝますと日野をあけち弥平次にまかせて十日に坂本へ帰陣いたし、十三日にやまざきのかっせん、十四日にはもはやひでよし公三井でらに着陣あそばされ、ひゅうがのかみの首としがいとをつなぎあわせて粟田口においてはりつけになされました。さあそのかちいくさのひょうばんが又たいへんでござりまして、このかっせんには三七どの、五郎ざえもんどの、いけ田きいのかみどのゝめん/\ひでよし公とちからをあわせておはたらきでござりましたけれども、なかんずく秀吉公は毛利ぜいとのあつかいをさっそくに埒あけ、十一日の朝にはあまがさきへとうちゃくあそばされまして、そのかけひきのすみやかなることはまことに鬼神をあざむくばかり。