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すもう
相撲
寺田 寅彦
「時事新報」1935(昭和10)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,122 字 · 9 页
四
そのときのこの若くて眉目秀麗な力士の姿態にどこか女らしくなまめかしいところのあるのを発見して驚いたことであった。
四
大学生時代に回向院の相撲を一二度見に行ったようであるがその記憶はもうほとんど消えかかっている。ただ、常陸山、梅ヶ谷、大砲、朝潮、逆鉾とこの五力士のそれぞれの濃厚な独自な個性の対立がいかにも当時の大相撲を多彩なものにしていたことだけは間違いない事実であった。それぞれの特色ある音色をもった楽器の交響楽を思わせるものがあった。皮膚の色までがこの五人それぞれはっきりした特色をもっていたような気がするのである。これとは直接関係のないことであるが、大学などでも明治時代の教授たちには、それぞれに著しくちがったしかもそれぞれに濃厚な特色をもった人が肩を比べていたような気がするが、近ごろではどちらかと言えばだんだん同じような色彩の人ばかりがそろえられるといったような傾向がありはしないかという気がする。これは自分だけのひが目かもしれないが、しかしそうなるべき理由はあると思われる。昔は各藩の流れをくんで多様な地方的色彩を帯びた秀才が選ばれて互いに対立し競争しまた助け合っていた。