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すもう

相撲

寺田 寅彦

「時事新報」1935(昭和10)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,122 字 · 9 页

青空文庫

二

この歴史についてもも少し違った見地からの新しい研究がほしい。たとえば世界各地方の過去から現在までに行なわれた類似の角力戯との比較でもしてみたら存外おもしろい結果が得られはしないかと思われる。

二

少し唐突な話ではあるが、旧約聖書にたしかヤコブが天使と相撲を取った話がある。

その相手の天使からイスラエルという名前をもらって、そうしてびっこを引きながら歩いて行ったというくだりがあったようである。その「相撲」がいったいどんなふうの相撲であったかさっぱりわからない。しかし、ヘブライ語の相撲という言葉の根幹を成す「アバク」という語は本来「塵埃」の意味があるからやはり地べたにころがしっこをするのであったかもしれない。そうして相撲の結果として足をくじいてびっこを引くこともあったらしい。それから、これは全く偶然ではあろうが、この同じヘブライ語が「撲」の漢音「ボク」に通ずるのが妙である。一方で和音「すまふ」はこれは相撲の音から転じたものであるに相違ない。bはmに、kはhに変わりやすいからである。ついでにもう一歩脱線すると、相撲の元祖と言われる野見宿禰の「スクネ」とよく似たヘブライ語の「ズケヌ」