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しょうせんでんしゃのしゃげきしゅ

省線電車の射撃手

海野 十三

「新青年」博文館、1931(昭和6)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,355 字 · 45 页

青空文庫

「右側の窓のところに頭部を当てて立って居りました」

「事件の前後と思われるころ、何かピストルらしい音響をきかなかったか」

「電車の音が騒々しいもので聞きとれませんでした」

「君は窓外の暗闇に何かパッと光ったものを認めなかったかい」

「ハッそれは……別に」

「君の位置から車内が見えていたか」

「見えていません。カーテンが降りていましたから……」

「車内へ入ってから、銃器から出た煙のようなものは漂っていなかったか」

「御座いませんでした」

「車内の乗客は何人位で、男女の別はどうだった」

「サア、三十名位だったと思います。婦人乗客が四五人で、あとは男と子供とでした」

「その車の定員は?」

「百二名です」

「これは参考のために答えて貰いたいんだが、あの際、銃丸は車内で発射されたものか、それとも車外から射ちこんだものか、何れであると思うかね、君は」

大江山警部が、少女の射ち殺された頃の事情を一向弁えぬ専務車掌に、こんなことを聞くのは、愚問の外のなにものでもないと思われた。

「車内で射ったんでしょうと思います」

専務車掌の倉内は、警部の愚問に匹敵するような愚答を臆面もなくスラリと述べた。