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しょうせんでんしゃのしゃげきしゅ

省線電車の射撃手

海野 十三

「新青年」博文館、1931(昭和6)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,355 字 · 45 页

青空文庫

2

あたくしは、自分自身のことを余り申上げる気が致しません。そのために疑いが深くなっても仕方がありません。こんな事件に、何にも罪のないあたくしみたいなものが引込まれるなんて、あたし一生の不運だと思っていますわ、なんでもいいんです」(東京郊外、渋谷町鶯谷アパートにて)

「大江山警部。年齢三十七歳。警視庁刑事部捜査課長。在職満十年。今回省線電車内に起りたる殺人事件は、本職を始め警視庁を愚弄することの甚だしきものにして、爾来極力探索の結果、此程漸く犯人の目星を掴むことを得たるを以て、遠からず事件解決の搬びに至るべし。なお本職を指して米国市俄古の悪漢団長アル・カポーンに買収されたる同市警察署長某氏に比するものあるは憤慨を通り越して、そぞろ噴飯を禁じ得ざるなり」(警視庁において、タイプライターでうった原文を手交)

*   *   *

さて「射撃手」事件の、そもそも発端は、次のようだった――

2

もう九月も暮れて十月が来ようというのに、其の年はどうしたものか、厳しい炎暑がいつまでも弛まなかった。「十一年目の気象の大変調ぶり」と中央気象台は、新聞紙へ弁解の記事を寄せたほどだった。