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しょうせんでんしゃのしゃげきしゅ

省線電車の射撃手

海野 十三

「新青年」博文館、1931(昭和6)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,355 字 · 45 页

青空文庫

電車の騒音は、車内よりもむしろ車外の方が大きいのだから。専務車掌室の扉を細目にひらいて、消音ピストルを打ったと考えてはどうであるか。それでは銃丸は、かおるの左胸を側面から射つことになる。然るに彼女の弾丸による創管は、ほんの少し左へ傾いているが、ほとんど正面から真直に入っている。これは違う。それでは、電車の進行中、彼は窓から屋根によじ昇り、屋上の欄干に足を入れて真逆にぶら下ると丁度、顔が窓の上枠のところにとどくから、そのまま蝙蝠式にぶら下って消音ピストルをうち放つ。それがすむと、何喰ぬ顔をして車掌室にかえり、室内の騒ぎを始めて知ったような風を装って馳けつける。うん、こいつは出来ないことじゃない。車掌倉内銀次郎の身辺をすこし洗ってみよう。

「コツ、コツ!」と扉を叩く者がある。

「よろしい」大江山警部は、扉の方を向いた。扉がスウと開いた。入って来たのは、給仕だった。

「速達でございます」そう云って給仕は、課長の机上に、茶色の大きい包紙のかかっている四角い包を置いて、出て行った。

警部は、注意して包をひらいてみた。中には、「ラジオの日本」という雑誌の昭和五年十二月号が一冊入っているきりだった。