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しょうせんでんしゃのしゃげきしゅ
省線電車の射撃手
海野 十三
「新青年」博文館、1931(昭和6)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,355 字 · 45 页
それを取上げてペラペラと頁をめくってみると、半頃に頁を折ってあるところがあった。そこを開けると、白い小布が栞のように挿まっていて、矢印が書いてある。矢印の示すところには赤鉛筆で、傍線のついている記事があった。表題は、「無線と雑音の研究」とあり、「大磯HS生」という人が書いているのだった。大江山警部にとって、無線の記事は一向ありがたくなかった。彼は雑誌を抛りだそうと思ったが、「雑音」という文字が、電車の騒音と関係がありはしまいかと思って、兎に角、ぽつりぽつりと読みはじめた。直ぐに彼は、見当ちがいだったことに気がついたけれども、その記事は、思ったよりも平易である上に、その内容は大江山警部の注意を喚起するのに充分だった。
「無線と雑音の研究」を思いたったHS生は、東海道線大磯駅から程とおからぬ山手に住んでいる人だった。彼の家にはラジオ受信機があったが、ラジオを聴いていると、それが聴きとれないほどのガリガリッという大きな雑音が、一日にうちに数十回入ってくるのだった。彼はラジオに雑音の起る時刻を測ってみたところ、それは毎日きまった時刻にガリガリッと鳴ることを発見した。