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しょうせんでんしゃのしゃげきしゅ
省線電車の射撃手
海野 十三
「新青年」博文館、1931(昭和6)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,355 字 · 45 页
警部はむずかしい顔をしただけだった。
「銃丸を身体の中へ打ちこんだ角度が判ると、どの方角から発射したかが識れるんですが、御存知ですか。殺されたお嬢さんは、心臓の真上を殆んど正面からうたれたそうですが、正確にいうとどの位の角度だけ傾いていましたかしら」
「さあ、それは……」警部はギクリとした。彼は屍体に喰い込んだ弾丸の入射角を正確に測ろうなどとは毛頭考えたことがなかった。「それは面白い方法ですね」
「面白いですよ、いいですか、これが電車です。電車の速度をベクトルで書くと、こうなります、弾丸の速度はこうです……」と笹木光吉は、三角定規を組合わしたような線を、紙の上に引いてみせて、「これが弾丸の入射角です。分解するとどの方向からとんで来たか、直ぐ出ます、やってごらんなさい」
電車と弾丸の速度の関係図
「あとからやってみましょう」
と警部は礼を言った。
「射たれたとき、お嬢さんの身体はすこし右に倒れかかっていたそうですね」
「ほう、それをどうして御存知です」警部は驚愕を強いて隠そうと努力するのだった。
「あの晩、邸へ遊びに来た親類の女が云っていました。殺されたお嬢さんの直ぐ前に居たのだそうです」