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しょうせんでんしゃのしゃげきしゅ

省線電車の射撃手

海野 十三

「新青年」博文館、1931(昭和6)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,355 字 · 45 页

青空文庫

器械や、犯人の姿を見られては困るからです」

大江山警部は、例の癖をだして獣のように呻っていた。その一方に、探偵小説家というものは、こんなにまで科学的でなければ勤まらないものかと、或る種の疑惑が湧いてこないでもないのだった。

「貴方はよくお調べですね」と警部が皮肉のつもりで云った。

「貴方が見逃しているところを拾って、事件を早く解決したいのです。僕も容疑者の一人だそうですからね。ハッハッ」

刑事が一人、馳けてきた。

「課長どの、総監閣下のお電話です」

「ナニ総監の……」警部は渋面を作った。

「お気の毒ですなア」と戸浪が彼の背中をポンと叩いた。

総監は果して非常に不機嫌だった。大江山捜査課長は油汗を拭う暇もなく、水を浴びたような顔をして、縷々と陳述した。

「君は、目黒の笹木光吉の情婦である赤星龍子が本郷の小柴木病院で毎日耳の治療をうけているのを知っているか」と総監が突然言った。

「いや、存じませんが……」警部は耳の治療どころか、龍子が笹木の愛人であることも聞くのが始めてだった。

「そんなんじゃ困るね、君は」と総監のつっぱなすような声が受話器の中に反響した。「それから、戸浪三四郎が元浜松高等工業学校の電気科の先生をしていたことを知ってるか」