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しょうせんでんしゃのしゃげきしゅ

省線電車の射撃手

海野 十三

「新青年」博文館、1931(昭和6)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,355 字 · 45 页

青空文庫

を呻った。そのとき側らに声があった。

「大江山さん。総監閣下を通じてお願いしましたところ、お使い下さるお許しを得たそうでして大変有難うございました」

「やあ、帆村君」警部は、青年探偵帆村荘六の和やかな眼をみた。事件の真只中に入ってきたとは思われぬ温容だった。彼は帆村を使うことを許した覚えはなかったが、それは多分帆村探偵の心づかいだろうと悟って、悪い気持はしなかった。

帆村探偵と大江山捜査課長とは、顔を近づけて、それから約二十分というものを、低声で協議をした。それが終ると、大江山警部の顔色は、急に生々と元気を恢復してきたように見えた。

「さあ、赤星龍子さんを、伝染病研究所の手術室へ送るんだ。ここから一番近くていい。それから私も、そっちの方へ行くから、用事があったら電話をかけて貰いたい」

部下一同は呆気にとられたのだった。大江山課長は、今宵三人の犠牲者を出したこの駅に、徹夜して頑張るのだろうと、誰もが思っていた。なんの面目があってオメオメ此の現場を去ることができるのか。それに、電車はまだひっきりなしに通る筈だ。終電車までにまだ二時間もあるではないか。それを気に留めないで引き払おうという課長の意が、那辺にあるかを計りかねた一同だった。