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しょうせんでんしゃのしゃげきしゅ
省線電車の射撃手
海野 十三
「新青年」博文館、1931(昭和6)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,355 字 · 45 页
ます。しかも赤星龍子嬢は心臓より反対に左によった箇所を真正面から打たれているのですから、これは弾丸が、鋼鉄板を打ち破り尚も物凄い勢いをもって被害者の胸を刺すことにならねば出来ない相談です。無論、現場をしらべてみると、鋼鉄板に孔があいているどころか、弾丸の当ったあともありません。明らかにこれは車内で弾丸を射った証拠です。車内で射ったという條件がきまると問題は大変簡単になります。車外の出来ごとは悉く問題の外に置いていいのです」
そう云って帆村探偵はちょっと言葉をきった。
「なるほど面白い推理ですね」と大江山警部は大きく頭をふって云った。「すると犯人の名は……」
と云いかけたところへ、けたたましい警笛の響がして、自動車が病舎の玄関まで来てピタリと止った様子だった。やがて廊下をパタパタと跫音がすると、病室の扉にコトコトとノックがきこえた。帆村探偵が席を立って開けてみると、多田刑事が笹木光吉を連れて立っていた。
「課長どの、すっかり種をあげてきました」と多田は晴やかに笑顔を作った。「これです、消音式で無発光のピストルなんです。笹木邸の大欅の洞穴に仕かけてあったんです」