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しんじゅとうのひみつ

真珠塔の秘密

甲賀 三郎

「新趣味」1923(大正12)年8月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,661 字 · 16 页

青空文庫

二

夏の永い日ざしもはや傾いて、外はもう夕暗であった。上野の山内は白く浮いて出る浴衣がけの涼みの男女の幾群かが、そぞろ歩きをして居た。

展覧会では二人の守衛が待ち受けて居た。幸二人とも恰度先夜の宿直で早速現場に案内して呉れた。

場内はしんとして、夜間開場の設備はないので、広い会場の天井に只二ヶ所、うす暗い電燈が、鈍い光りを眠むそうに投げて、昼間満都の人気を集めて、看客の群れ集うだけ、それだけ人気のない会場は一層静かなものであった。守衛の一人は年頃六十以上の背の高い老人で、一人は軍人上りとか云う丸々とした、頑丈そうな四十恰好の男で、いずれも頗る好人物らしく見えた。

問題の塔は正面入口のすぐ右側に、四方硝子の戸棚に収められ、夜眼にもそのすべすべした豊麗な膚は清い色を放って居た。曲者の飛び出した窓は、地上から十五尺ばかりの所を館の周囲をとりまいて居る一連の明りとり窓の一つで、壁際にある一列の陳列棚は九尺であるから、その頂部より尚六尺の上に開かれて居る。

「そうです。私が見付けましたので」若い方の守衛は友の問に答えた。「恰度飛び出す所でした。