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めがね
眼鏡
織田 作之助
「令女界」1943(昭和18)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,591 字 · 4 页
同じにされてたまるかい。ネクタイには結び方があるが、眼鏡なんか阿呆でも掛けられる。眼鏡を掛ける練習なんて、きいたことがねえよ」
「はばかりさま、眼鏡にでも掛け方はありますわよ。お婆さんみたいに、今にもずり落ちそうなのもあるし、お爺さんみたいに要らぬ時は、額の上へ上げてしまうのもあるし……」
「どっちみち、お前なんか、どう掛けてみたって、似合いっこはないよ。いい加減のところで妥協して、あっさり諦めてしまうんだな」
「あら」
「それに、元来女の眼鏡といむ奴は誰が掛けたって、容貌の三割がとこは、低下するものさ。おまけに、頭の良い人間は眼鏡なんか掛けんからね。生理学的にいっても、眼の良いものは、頭が良いにきまっている。その証拠に、横光でも川端でも、良い小説家は皆眼鏡を掛けておらん。小説家に眼鏡を掛けたのはすくないからね」
「でも、林芙美子さんは、掛けているわ」
と、道子は口惜しそうに言ったが、ところが、その兄が間もなく貰ったお嫁さんは、ちゃんと眼鏡を掛けていた。
「それ見なさい。あんまりひとのことを……」
「しかし、僕のお嫁さんの容貌は、三割方落ちても、なおこのくらい綺麗なンだからね。