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めがね
眼鏡
織田 作之助
「令女界」1943(昭和18)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,591 字 · 4 页
三年生になった途端に、道子は近視になった。
「明日から、眼鏡を掛けなさい。うっちゃって置くと、だんだんきつくなりますよ」
体格検査の時間にそう言われた時、道子はぽうっと赧くなった。なんだか胸がどきどきして、急になよなよと友達の肩に寄りかかって、
「うっちゃって置くと、ひどくなるんですって」
胸を病んでいると宣告されたような不安な顔をわざとして見せたが、そのくせちっとも心配なぞしていなかった。むしろいそいそとした気持だった。
その晩、道子は鏡台の傍をはなれなかった。掛けてははずし、はずしては掛け、しまいに耳の附根が痛くなった。
――風邪を引いて、首にガーゼを巻いた時めたいに、明日はしょんぼりうなだれて学校へ行こうかしら。そしたら、みんな寄って慰めてくれるわ。それとも、しゃきんと胸を張って、行こうかしら、素敵ね、よく似合うわ、と言ってくれるわ。
そんなことを考えていると、
「おい、道子。だらしがねえぞ。いつまで鏡にへばりついてるんだ」
兄にひやかわれた。
「兄さまだって、はじめて背広着た時は、こうやって……」
「莫迦! あの時はネクタイを結ぶ練習をしたんだ。