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めがね

眼鏡

小川 未明

「お話の木」1937(昭和12)年9月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 7,487 字 · 16 页

青空文庫

それを考えると、だれにもいうことなく、腹が立つのであります。

「悪口をいうから、正ちゃんにはあげないわ。」

「いるもんか、かず子ちゃんは、もっと、もっと、きれいなものがあるのを知らないだろう。」

このとき、正吉は、ほんとうにきれいなものがあるのを思い出したのでした。それで、ほくほくしていると、

「ああわかった、正ちゃん、お花でしょう?」

「花なもんか。」

「正ちゃんの知っているもの?」

「うん、そうだよ。」

「ありゃしないわ。」

かず子ちゃんは、勝ち誇ったように、片足を上げて、トン、トンと跳ねました。

「じゃ、きてごらんよ。」

正吉は先に立って、くさむらの中へ入りました。木にからんだ、からすうりの葉に止まっている、うす赤い蛾を捕らえました。

「ほら、かず子ちゃんの貝より、もっときれいだろう。」

生きている蛾のほうが、貝がらよりもきれいでありました。けれど、かず子さんは、気味悪がって、その蛾を取ろうとしませんでした。

「ほんとうに、きれいだわね。ついている白い粉、毒でしょう。」

「あとで、手を洗うからいいよ。数珠玉だって、この青い貝よりきれいだぜ。」

「やっぱり、私、貝がらのほうがいいわ。