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さとうどろぼう

砂糖泥棒

黒島 伝治

1923(大正12)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,108 字 · 9 页

青空文庫

」

「嬉し、嬉し、うち、金ン比羅参りに連れて行て貰うて、鶴を見て来る。鶴を見て来る。」せつは、畳の上をぴんぴんはねまわって、母の膝下へざれつきに行った。与助は、にこにこしながらそれを見ていた。

「そんなにすな、うるさい。」まだその時は妊娠中だった妻は、けだるそうにして、子供たちをうるさがった。

暫らくたって、主人は、与助が帰ったかどうかを見るために、醸造場の方へやって来た。主人を見ると、与助は、積金だけは、下げて呉れるように、折入って頼んだ。

主人は、顔色を動かさずに、重々しく

「何で暇を取らすか、それゃ、お前の身に覚えがある筈じゃ。」と云った。

与助は、ぴり/\両足を顫わした。

「じゃが、」と主人は言葉を切って、「俺は、それを詮議立てせずに、暇を取らせようとするんじゃ。それに、不服があるなら、今すぐ警察へ突き出す。」

急に与助は、おど/\しだした。

「いゝえ、もう積金も何もえいせに、その警察へ何するんだけは怺えておくんなされ!」

「いや、怺えることはならん!」

「いゝえ、どうぞ、その、警察へ何するんだけは怺えておくんなされ!」与助は頭を下げこんだ。――

とうとう、彼は、空手で、命から/″\の思いをしながら帰った。