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しゃかいじひょう
社会時評
戸坂 潤
「文藝春秋」1933(昭和8年)年6月~1937(昭和12)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,408 字 · 380 页
の捨て場にされる平民が、宗秩寮によって箸にも棒にもかからないロクでなしと見做されたということだが、尤も同じく平民と云ってもブルジョアもあれば、プロレタリアもあるので、一概には云えないのだから、その点は安心だとして、併し何より心配なのは、こうやってどしどし「不良」でない華族が減って行きはしないかという点だ。
それでなくても華族一代制と云ったような消極的な思想が横行している世の中であり、最近武藤元帥の遺族の如きは男の相続人がないのを理由として、この思想を実行した程だから「不良」でない華族は段々減って行く危険に曝されている。一体これは華族社会から見て、まことに悲しむべき現象ではないか。
華族は普通の人間とは違った点があればこそ特別な礼遇を、即ち平たく云えば特権を持っているのであって、それも無線電信を発明したとか何とかいう普通人間の持ちそうな特異性によって普通の人間から区別されているのではないのだから、一体普通の人間がやるようなことをやったのでは、その特権の手前色々困る関係が出て来るのは当然だ。だのに心ない華族の或る者は彼等が元来藩屏であって普通の人間ではないことを忘れて、普通の人間であるかのような錯覚を起こす。