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しゃかいじひょう
社会時評
戸坂 潤
「文藝春秋」1933(昭和8年)年6月~1937(昭和12)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,408 字 · 380 页
だが之は何も市電が悪いのでもなければ、況して市電従業員が悪いのでもない。大東京市の近代資本主義的発達に伴って、交通機関が極度に発達した。その結果、実を云うと路面電車程時代後れな交通機関はなくなったのである。之は処が別に東京だけの特別な現象ではないので、外国の近代都市にはいくらでも前例がある筈だから、こうした愚劣な電車を今時運転しているのは明らかに「市政調査」の好きな市議達の、怠慢だと云わざるを得ない。関東震災を期として、多分市電は一掃されるべきであったろうに、その折の五千万円の損害にも屈せず、ワザワザ市電を復興して了った責任は市当局にあるのだ。この時市電自身を整理しておいたら、今になって市電従業員の整理の必要などは起きなかったのだ。この市電従業員整理案、乃至之に基く従業員のストライキは、云う迄もなく資本主義発達の一矛盾の現われだが、夫が特に資本主義の技術的発達に於ける矛盾を最も直接に表わしている処に、この問題の特異な点があるのである。
だから、いくら山下局長が今後に於ける整理の打切りを声明しても、それが見す見す嘘になることは判り切っているので、実はそういう人為的な姑息な手段では、市電の運命の大勢はどうにもならないのである。