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しゃかいじひょう
社会時評
戸坂 潤
「文藝春秋」1933(昭和8年)年6月~1937(昭和12)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,408 字 · 380 页
だがただのトラブルスならば我慢するのは大したことではなく、単に心懸けの問題に帰着するかも知れないが、そのトラブルスが同時に非常に金のかかる(十二三億円もかかる)困難だとすると、夫は容易ならぬ困難だと云わねばなるまい。日本はその膨脹のために、或いはその膨脹の合理化のために、今やこの到底普通の民族では忍び得ないような天才的な困難を忍んでいるのである。ソヴィエト・ロシアは割合明朗な気持ちで、洒脱に戦機を逸脱して肩をすかしてやって行けるらしいが、中国の国民になるともはや決してそのような楽な気持ちではない、身をかわすにさえも膏汗がにじみ出るのである。処が日本の国民も亦、同様にこの到底忍ぶべからざる困難を耐え忍んでいるのである。して見ればつまり、日支国民はお互い様ということになるのである。併しそれにも拘らず日本帝国そのものは膨脹して行くのであり、中華民国そのものは萎縮して行くのである。
尤もあまりの困難に耐えかねて、時々不吉なうめき声を出す不心得な日本人がないではない。併しそんな女々しいうめき声は、甚だ豪勢な怒号で一たまりもなく吹き消されて了う。東京の某大新聞記者町田梓楼氏は、市内の数カ所と信州の教育会とで「非常時日本の姿」