轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
そぼのために
祖母のために
宮本 百合子
「文芸春秋」1925(大正14)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,632 字 · 16 页
後で、種々枕元に飾ったがどれもそのカアネーション程は気に入らなかった。そして、不満そうに、
「あのお友達の下すった花はよかったなあ」
と呟いた。
四五日退屈な日が過た。医者は、段々祖母の食慾不振を不安がり始めた。生活力が洩れる水のように、絶えず目立たず、然し恐ろしい粘り強さで減退し始めた。一昨年の大震災当時祖母は過度な苦労をした。実の娘と孫とを失った。以来、衰えが目についた。病気そのものはもう癒ったのに、恢復する力が足りないのだ。祖母自身、生きたがらない。うっとりと死にたがっている。そういう病人を見ているのは不思議であった。激しい病と戦う若者を看護するような意気込みが無い。何でも活かそうという熱が湧かない。「どうだろう、」――漠然とした恐怖のない心配があるだけだ。
或る日、私は看護婦の入浴の間、祖母の傍にいた。火鉢の火が少くなって来た。台所に行ってガス火起しを見つけているうちに、私はふと何ともいえず胸を打ったものを見出した。硝子戸棚の下の台に、小さく、カンカンに反くりかえったパンが一切、ぽつねんと金網に載せたまま置いてある。眼を離そうとしても離れず、涙であたりがぼうっと成った。