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そぼ

祖母

楠山 正雄

「赤い鳥」1921(大正10)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,258 字 · 7 页

青空文庫

一雄はどんなにそれが欲しかったでしょう。

「貞吉(ていきち)、貞吉、出来たらおくれ、ね。」

貞吉というのは、小僧の名でした。

「でもこれはまだほんとうに出来上(できあが)っていないんですからね、すっかり出来あがったら上げましょう。」

「だっていつのことだか知れないじゃないか、いいからそれをおくれよ。」

「だめですよ、まだ彩色(さいしき)もしてないし……」

「いいよ、彩色なんか僕自分でするから。」

「そんなわがままをおっしゃってはいけません。あなたに彩色ができるものですか。」

「できらい、できらい。おくれってばよう。」

貞吉はそれでも手離そうとはしませんでした。書きのこした桜の花や、鳥の羽(は)の手入れに夢中になっていました。一雄は、とてもだめだと思うと、おどかしの積りでしくしく泣(な)き出(だ)しました。そのうちほんとうに悲しくなって、おいおい泣きながらお茶の間へ駈(か)け込んで行きました。

「どうしたの。」

おばあさんはもう目の色を変えていました。

「貞吉が、貞吉が……くれないんだ。」

貞吉は茶の間へ呼ばれて、さんざん叱(しか)られて、理由(わけ)はなしに、丹精した花ガルタの画を、半できのまま取上げられてしまいまいた。