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かみだな

神棚

豊島 与志雄

「新潮」1923(大正12)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,427 字 · 44 页

青空文庫

丁度いい所へやって来た。実は君と一杯やろうと思っていたんだ。……お久さん、済まねえが、酒と何か一寸摘むものを、これで一走りしてくれませんか。」

そしてもう蟇口をあけて、五十銭銀貨を二枚取出して、それをちょんと餉台の上にのせた。

お久は暫く彼の顔を見ていたが、その視線の余波でちらと俺の顔を撫でてから、落付き払って云い出した。

「お酒なら、少しくらいは家にありますよ。それに、何もないけれど、※に奈良漬くらいでよかったら……。」

「それだけありゃあ沢山。じゃあまた酒が切れたら願いましょう。」

そして彼はすぐに、五十銭銀貨を蟇口にしまい込んだ。実にはっきりしていた。それが却って俺には心地よかった。ただ少し不承なのはお久のやり口だった。

「酒があるならあると、早く云やあいいのに。実は俺は飲みてえのを我慢してたんだぜ。」

「それごらんよ、飲みたいのを我慢するだけの引け目が自分にあるじゃないか。……私もね、お前さんが美事調えてきてくれたら……と思って取っといたんだけれど……。」

いつも亭主をやりこめることばかり考えてる女だ、と俺は思ったが、人前で云い争うでもないので黙った。