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わたしはいんきょではない
私は隠居ではない
吉田 茂
「文藝春秋」文藝春秋新社、1962(昭和37)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,313 字 · 13 页
になることが鋭くてね、皇族にもこういう方がおありかと感心させられたものでしたがね。
その次が幣原さん。幣原さんは死んじゃったし、それから私となるわけだが、私は御承知のように、なりたくってなったわけでないので、鳩山君の追放のあと頼まれてなったわけでね。暫くの間というようなつもりだったが、その後、鳩山君が半身不随になったりして、……鳩山君が俺に譲れ譲れというのを「大切なお役を中気病みに任せられるか」と云って大層憎まれてね。といってお国のためを思えば無責任なことは出来ませんからね。
鳩山君とは昔は「俺、貴様」の仲でね、何でも云えたんだが、矢張り病気をしてから変ってね、冗談も云えなくなりましたよ。
誰の時だったか、築地の本願寺で盛大な追悼会があってね、私も行った。行って見ると鳩山君が来ている。緒方君が隣に坐っていたが席を譲ってくれて隣同士に坐っていたわけなんだ。その内、焼香が終わって鳩山君が、
「このままもう帰ってもいいのか?」
と聞くから、
「ああ、いいんだ。だが僕も今帰ると、君と一緒に並んで歩かなくちゃならないからもう少しいるよ」
と云ったら怒ってね。
「そんなにいたきゃあ、死ぬまでいろッ」