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しほんたいへいき

私本太平記(一)

吉川 英治

吉川英治『私本太平記(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:私本太平記、私本太平記。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 页

青空文庫

「みなもお待ちしていた」

「さあ、これへ」

さきに集まっていた面々は、日野資朝、花山院、伊達、洞院の諸卿など、いずれも蔵人以上な官位の者だったが、ここでは席次も問わず、

「今日の集まりは、一に其許のおはなしを聞くにある。評議もまた、それからの上でといたそう。いざ、人々もみな、座をここに寄せられい」

たちまち、欄の方に分れていた武士の組、僧形たちの組、ほかすべても、日野蔵人俊基をめぐって、その左右に、大きな輪となって居流れた。

一同、かたずを呑みかけると、俊基は、ちょっと眉をひそめ、

「……あ。どなたか」

と、東山に面している水欄の方を指して、

「対岸から、ここの内が見えるはずもないが、なんとなく、気が散りますな。そこの縁の簾を、みな垂れ籠めてくださらぬか」

「いかにも」

土岐左近が立って、そこの簾八枚とも、みな垂れて、座にもどった。

俊基はまた、武士の多治見国長や、足助次郎を見て言った。

「いつも、定会の折には、この家の五町四方の辻立ちや、また物見の用心は、すべて各※(二の字点、1-2-22)方の手におまかせしてあるが、今日もお抜かりはなかろうの」

「お案じなく」