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しほんたいへいき

私本太平記(五)

吉川 英治

吉川英治『私本太平記(五)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:私本太平記、私本太平記。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 页

青空文庫

「何の、鎌倉の滅亡は、てまえどもには、世の終りもおなじことでございまする。父祖百年らい、稼業をつづけ、ご恩顧をうけ、わけて、ご当代には、なんぼう、お慈しみを受けたやらしれませぬ。てまえどもが仕事に腕を磨きあい、仕事に生き効いを持ちえてきたのも、上に御所さまのような、ご庇護と理解のあるお方が、おいでたからでございまする」

「むむ、おもしろかったな鎌倉創りは。だが、気狂いが火をつけ出した。もうお仕舞いだ」

「くやしゅうございます。御所さまも世にいなくなり、この鎌倉も灰かと思えば、私どもも、もう生きるささえはございませぬ」

「何。死にたいと?」

高時は、かえって、きょとんとした顔つきで、

「武士でもない仏師やら笛吹きどもが、死んでどうする! 高時は死なねばならぬゆえ死ぬまでのこと。おまえらにはもう長の暇をくれたのだ。……去れ、邪魔くさい」

また、左右の武士へも、こう命じた。

「やい。そこらでベソベソ泣いておる遊芸人や工匠どもを追っ払え。そして寺門を堅め、新田が来たら一ト泡ふかせろ」

声にヒビが入って、それがひどく非情に聞える。

でもなお、ここにいる諸職諸芸の雑人たちが、高時を慕う眼には変りもなかった。