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しほんたいへいき

私本太平記(五)

吉川 英治

吉川英治『私本太平記(五)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:私本太平記、私本太平記。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 页

青空文庫

西の宮から先、鹵簿は、正成以下の畿内の兵数千が露ばらいして進み、六月五日の夕、東寺に着いた。

ここでお待ちしていた洛内軍には、千種ノ中将忠顕があり、足利高氏、弟直義も見えている。

中でも一トきわ目についたのは、佐々木道誉の黄母衣組の美々しさだった。彼も急遽、近江からこれに会して、

「足利と共に力を協せ、六波羅攻略の大功を仕遂げし者」

と称え、また高氏もそれを称揚して、共々、曠れの御車迎えに来ていたのだった。

「……あの、道誉か」

と、後醍醐のご記憶にも、彼の特有な人間臭が、忘れえぬものとしておありらしく、謁見の庭、夜の賜酒にも、道誉は加えられていた。

何しろ、これまでは、いわゆる大覚寺統の――後醍醐方の公卿と忌まれて――逼塞していた公卿ばらも、みな旧衣冠を新たに着けて、どこからともなく、ぞくぞくここに参集していた。よくいう、

蛇、穴ヲ出ル

の趣にも似て。――前の摂政ノ関白太政大臣から、左右の近衛ノ大将、大納言、八座の公卿、七弁の高官、五位、六位の蔵人、諸司の宮人までが、むらがり寄って来たのである。まことに御稜威というものか。はた、あさましい人心というべきか。