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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
13 黒白帖
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,638 字 · 233 页
「いやこんなに集まったのは始めてだろう。けれど職屋敷の一郭ときたらたいへんな広さだ。建物の数でも外からではわからない」
「えらいもんだな、盲人でも」
「なにしろ明石の検校と仰っしゃるのは、当道派の主座で、それに、死んだ将軍家とはお従弟にあたる人だ。あれくらいなことはわけなくできたろうさ」
「そういえば列のいちばん先に、職屋敷の執事と一人の女性をつれて歩いて行ったね、あれが明石の検校か」
「もと明石ノ浦にいたのでそう呼ばれているが、覚一法師というのがほんとの名だよ。晩年は、当道の如一に就いて、琵琶の奥の奥の道までをきわめたものだそうだが、もう二十歳ごろ名人の聞えがあって、なんども宮中に召されたことだってあるのだそうだ」
「晩年というが、見たところまだ、四十四、五にしか見えぬ検校だったが」
「そう、まだそんなもんだろうよ。けれど老成してござるから聖といってもおかしくない。盲最上の位なので、緋の衣に、検校帽子をかぶり、後ろに燕尾を垂れて行くさまは、唐画の人を見るようじゃったな」
「それはいいが、この途方もないたくさんな盲の衆は、いったいどこへ行くのかな」
「さればよ。