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あきげ
秋毛
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社、1981(昭和56)年12月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,954 字 · 4 页
早りっ気で思い立つと足元から火の燃えだした様にせかせか仕だす癖が有るので始めの一週間ばかりはもうすっかりそれに気を奪われて居た。
土の少なくなったのに手を泥まびれにして畑の土を足したり枯葉をむしったりした。
けれ共今はもうあき掛って居る。
あんまり騒がなくなった四五日前から前よりも一層ひどく髪が抜ける様になった。
女中に「抜毛を竹の根元に埋めると倍になって生えるそうだ」と母が「裏の姫竹の根に埋めておやり」と命じた。
女中はハイハイとうけ合って居たっけがそのまんま忘れて午後になって見ると大根の切っ端やお茶がらと一緒に水口の「古馬けつ」の中に入って居る。
「オヤオヤヘエー」って云いたい気になった。
別に腹も立たない。
其のまんまに仕て置く。
こんな事をひどく気にして居たら女中なんかと一緒に居られるもんじゃあない。
幾度も幾度も女中が変って知った事だけれ共、私が手紙を出しとくれと云って先ぐ腰をあげる女は好い方である。
其の家の娘がたのんだ仕事の仕工合で女中の気持は大抵わかるものだと思う。
又こないだまで居た、話しにもならない様な女中の事を思い出す。
顔がかなりで生半分物が分って、悪い事に胆の座った女ほど気味の悪いものはない。