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かがくとぶんがく

科学と文学

寺田 寅彦

「世界文学講座」1933(昭和8)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,562 字 · 50 页

青空文庫

がある。それは「夢の論理」であってもよい。そういうものが何もなければ、それは読み物にならない。

非論理的論理というのは、今の人間のまだ発見し意識し分析し記述し命名しないところの、人間の思惟の方則を意味する。これを掘り出し認識するのが未来に予想さるる広義の「学」の一つの使命である。科学も文学も等しくこの未来の「学」の最後のゴールに向かってたどたどしい歩みを続けているもののようにも思われるのである。

「文学も他の芸術も、社会人間の経済状態の改善に直接何かの貢献をするものでなければならない」というような考えや、また反対に「文学その他の芸術は芸術のための芸術でなければならない」といったような考えや、そういう二つの考え方の間に行なわれる討議応酬は、自分のような流儀の考え方から見ればおよそ無意味なこととしか思われないのである。真実な現象の記録とその分析的研究と系統化が行なわれて、ほんとうの「学」が進歩すれば、政治でも経済でも人間に有利になるのが当然の帰結であると思われ、また一方芸術的に美しいものであるためには、その中に何かしら、ここでいわゆる「学」への貢献を含むということが必須条件であると思われるのである。