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かがくのじょうしきのため
科学の常識のため
宮本 百合子
「新女苑」1940(昭和15)年8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,479 字 · 19 页
答えずそれを無視している場合が多い。さもなければ、人間も自然の中に生れたものであるという関係からだけ自然の力と人間の交渉を見て、人間も窮極には自然に敗けるのが宇宙の必然であるという風な、科学的らしく見えるが実際は観念的な宿命論のような結論を引き出していることも少くない。やがて地球が亡びるなら、今私たちが短い一生を一生懸命に暮したって何になるだろう、といった文学者が日本にもあったが、コフマンの地球の年齢について説明している話をよめば、そんな哲学めいた感想も実はたいそうきまりの悪い無知から出発していることがわかる。
コフマンもこの本は年少のひとたちのためとして書いているし、神近さんも、「はしがき」には、子供にこの本を読ませようとする人々のためにという註をつけていられる。
だが、はたしてこの本は子供の本として私たちの興味や必要から遠いものだろうか。なるほど、科学の本としてとりあげられている題目は重要であるが、書き方は子供の印象に入りやすい方法で、従って局面も限って触れられている。この本に書いてあるほどのことなら、文化に関心をもっている大人が、一人のこさず皆知っているといえるだろうか。