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かがくのじょうしきのため

科学の常識のため

宮本 百合子

「新女苑」1940(昭和15)年8月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,479 字 · 19 页

青空文庫

コフマンがその成果に立って示している数字が私たちの記憶の基礎にあって初めて、昔の人の示した数字にある面白い誤りも生々と私たちに今日までの研究の意義を知らせるだろう。宇宙への認識は現代次第次第に拡大されますますリアルなものとなって来ている。「膨脹する宇宙」という本は、私の読んだことのない本だが、やはりその推移を描いているのだろう。文学としてのギリシャ神話は宇宙の壮大と美麗と威力とへの関心を当時の都市の形成を反映している神とその人間ぽい生活感情で形象していて面白い。イギリスの十九世紀初頭の詩人画家であったウィリアム・ブレークが、独特な水色や紅の彩色で森厳に描いた人格化された天の神秘的な版画も、宇宙に向ってのロマンティックな一種の絵として面白いものだったと思う。

岩波新書で出ている中谷宇吉郎氏の「雪」は、北海道で行われたこの物理学者の研究がきわめて具体的な人間生活への交渉の面から入って意味ふかくのべられていて大変面白い。日本の農業その他と雪とは深いつながりがある。そのことからこの学者の態度も私たちの共感を誘うものである。同じ著者に「雷」がある。雷についての世界の探究にふれて語られていて、平明な用語は私たちに親しみぶかくこの本に近づけさせる。