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かがくひはんのかだい

科学批判の課題

三木 清

「新興科学の旗のもとに」新興科学社、1928(昭和3)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,229 字 · 40 页

青空文庫

二

しかるに理論を実践よりも尊ぶところのかくのごとき人間解釈は、社会的に観察すれば、奴隷制度によって維持されていたギリシアの有閑階級生活の表現にほかならないであろう。アリストテレスは、プラトンも同じく、閑暇(σχολ※)の重要なる意味を認めた。観想的なる生活はまさに閑暇にある生活であり、したがって学問もまた必然的に閑暇と連関する**。このようにしてアリストテレスは学問の歴史的起源を叙述して、数学的学問はエジプトにおいて最初に現われたが、それはかしこでは僧侶の階級が閑暇をもっていたためである、といっている。ギリシア的学問の理念は実に特殊なる有閑階級の生活の地盤において成立し、発展したのである。

* 観想的生活の意味の歴史については、Franz Boll, Vita contemplativa. が参考になる。

** ラテン語の schola、近代語の School: Schule などはすべて閑暇(σχολ※)という語から出ている。

二

しかるにルネサンスにおける自然科学の成立とともにひとつの新しい学問理念が生まれた。ここでは学問はもはや単純に観想を本質としない。