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かがくひはんのかだい
科学批判の課題
三木 清
「新興科学の旗のもとに」新興科学社、1928(昭和3)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,229 字 · 40 页
社会科学は、その実践的本質の故に必然的に現実の存在と連関を保ち、したがって実証的でなければならぬから、現実の存在からの抽象は必然的に現実の存在そのものの分析と結びつかねばならぬ。マルクスは分析なき抽象を次のように批評する、「かくのごとく抽象のみありて分析の存在せざる以上、究極の抽象において、一切の事物が論理的範疇として表現されるということは、何ら驚くに当らぬことではないか。一個の家屋の個別性を形成しているところのすべてのものを、次から次へと剥がしてゆくならば、すなわちそれをもってその家屋が組立てられているところの材料や、それを他と区別せしめるところの形式や、を抽象してゆくならば、そこにはついに単に一個の物体のみしか残らない――さらにこの物体の限界を抽象するならば、そこにはもはや単に一個の空間しか残らない、――最後にこの空間の諸次元を抽象するならば、ついにもはや単に全く純粋な量、この量という論理的範疇しか残らなくなるということは、何ら驚くに当らぬことではないか。かくのごときあらゆる対象から、有生たると無生たるとを問わず、人間たると物たるとに論なく、一切のいわゆる偶性を抽象することによって、これを究極まで抽象してゆけば、ただ論理的範疇のみがそこに実体として残る、といい得るわけである。