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かがくほうほうろん
科学方法論
戸坂 潤
「科学方法論」岩波書店、1929(昭和4)年6月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,035 字 · 284 页
へ誘導し得る筈である、という場合である。ここにある問題は素養ある他人が、之に付いて来ることが出来るか否か、即ち異議と曖昧に出逢わずに歩むことが出来るか否か、である。――之を誘導性と呼ぼう。伝承性と誘導性、この二つの場合は、決して同じではないであろう。何となれば第一の意味に於て教え得るものは必ず第二の意味に於ても亦教え得るものでなければならないが、併し、その逆は必ずしも成り立たないからである。この意味に於て例えば哲学は学び得ないという言葉は意味を有つと考えられる。何となれば哲学は誘導され得るが、併し伝承され得ないという関係を、その言葉は語ろうとしているのだから。
伝承性としての教導性と誘導性としての夫とは、一応このようにして区別されることが出来ると思う。但し後者は前者よりも一般的であったから、学問性のもつ教導性として、場合によっては、誘導性のみを理解しても差閊えないであろう。そこで人々はこう云うかも知れない、このような意味で――誘導性という意味で――教え得るという性質は必ずしも学問に固有であるのではない。芸術も(絵画でさえも)或る意味に於て、但し無論第一の意味でではなくして第二の意味に於て、教え得られるではないか、と。