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いねのいちにち
稲の一日
中谷 宇吉郎
「世界」1946(昭和21)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,013 字 · 20 页
ところが水温を四十度に上げると、一日で立派に芽が出て来る。即ち発芽に要する時間は、外界の条件によって、十分の一くらいに縮めることが可能である。
この考えを進めて行って、もし稲をその各生長段階において、最適の条件に保ってやれば、籾をまいてから米の出来るまでの期間を、ずっと縮めることができるはずである。事実それは縮められるのであるが、その方の専門学者の話によると、何にしても相手は生命力のあるものであるから、いくら外界の条件を最適に保っても、生長はするであろうが、そう勝手に結実までの期間をひどく縮めることは出来ないであろうということである。
それは如何にもそのとおりであろう。しかし私には、稲の生命力が一日が二十四時間であることを知っているようには思われない。そこで一つやってみたい実験がある。
それは温度と照射とを自由に変化し得る恆温箱を作って、その中で、稲の壺栽培をする実験である。温度といっても、稲の場合は、気温と水温とがあるが、まず水温を自由に変化し得るような装置を作れば、箱の壁の断熱さえよくしておけば、気温は大体水温と似た値になる。それで初めての実験では、水温さえ支配してやれば充分であろう。