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くうちゅうひょうりゅういっしゅうかん
空中漂流一週間
海野 十三
「名作」1939(昭和14)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,324 字 · 35 页
「おお、あそこを飛んでいるんだから、もう見えてもよさそうなものだが……」
と、「火の玉」少尉は、上を指した。黒暗澹たる闇をぬって、三つの飛行機標識灯がうごいていく。それはだんだんこっちへ近づくように見えた。
「うまいぞ。たしかにこっちへやってくる」
「すこし変だよ。あれじゃ高度が高すぎて、気球の上を通りすぎてしまいそうだ」
キンチャコフが、なかなか理窟のあることをいった。
「通りすぎられて、たまるものかい。おい、今だ。信号灯をもっと振れ」
二人は、懸命に懐中電灯をうち振ったつもりであった。
だが、この飛行機は、ついにキンチャコフのいったとおり気球の上方、約五百メートル近いところを飛び過ぎ、やがてだんだん遠くなってしまった。
「畜生、とうとう行かれてしまった」
「どうも無理だよ。こんな小さな灯じゃ仕様がない。そのうえ、千切ったような雲が一ぱいひろがっていて、上からは案外見透しがきかないんだぜ」
キンチャコフは、得意らしく喋りたてた。「火の玉」少尉は、キンチャコフが、ソ連仕立のかなり優秀なスパイであることを見破った。そうなると、これからさらに一層、油断はならないわけだ。