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くうちゅうひょうりゅういっしゅうかん
空中漂流一週間
海野 十三
「名作」1939(昭和14)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,324 字 · 35 页
キンチャコフが呑気そうな口を叩いた。
「おい、貴様は無電の知識をもっとらんのかね」
六条がたずねた。
「さあ、さっぱり駄目だねえ」
と、キンチャコフは気のなさそうな返事をした。キンチャコフの方が、六条よりも死生を超越しているらしく見える点があって、「火の玉」少尉も少々癪にこたえている。しかし、単にぐうたらに生きるものと、帝国軍人としてその本分に生きるものとは、どうしてもちがうのがあたり前で、六条の方が臆病だというわけではない。
「おおっ、気球が下りだしたぞ。ああ、ありがたい。温くなるだろう。ふん、あの辺の雲の中へとびこむな」
キンチャコフがはしゃぎだした。
六条は、とうとう無電器械のことをあきらめてしまった。空中漂流以来、戦友戸川のことを思い出し、こっちもこんどは一つ細心且沈着にいこうと努力をつづけてきたわけだが、たかが無電器械一つと思うのが、どうしたってこうしたって、うんともすんとも直りはしないのだ。
(やっぱり、自分の柄にないことは、駄目なんだ)
彼ははじめて悟りに達したような気がした。と同時に、今までの妙な気鬱が、すうっと散じてしまったようであった。