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あきや

空家

宮崎 湖処子

「国民之友」1889(明治24)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,554 字 · 30 页

青空文庫

間に還りて寝ぬ、されば彼は同年らに臆病者と呼ばれ、少女情人らの噂にも働きなしとの評はあれど、父老らは彼を褒め、彼を模範にその子を意見するほどなりき、しかして彼また決して臆病者にあらず、謹厚の人もまた絳衣大冠すと驚かれたる劉郎の大胆、虎穴に入らずんば虎子を得ずと蹶起したる班将軍が壮志、今やこの正直一図の壮年に顕われ、由々しくも彼を思い立たしめたり、

「和主が戦争にゆくとか」「しかり」「げにか」「げによ」「そは和主にしては感心のことなりいかにしてしか思い立ちしや」「どうという子細はなけれど、いつまでかくてあるも不本意なれば、金を得て身を立てんとも思うなり」「和主には金より命の惜しからずや」「命とよ命は大丈夫なりわれらは戦うものにあらず、ただ戦場のはるか後まで兵糧弾薬を運ぶ人夫なれば、命は兄貴大丈夫なり」

これまでただ佐太郎を試みたる勇蔵も、すでに旅装束して来たれる彼が気胆に痛くも打たれぬ、「シテ一日に幾何の賃銀を得べきか」「しかとはわれも知らねど、一日半金ないし一金を得べしと聞けり」「一日に一金とよ……和主一個か」「独り」「他に誰も伴わなきや」