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くうしゅうかのにほん

空襲下の日本

海野 十三

「日ノ出 付録 國難來る! 日本はどうなるか」1933(昭和8)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,527 字 · 30 页

青空文庫

毒瓦斯と闘う市民の群

ゴヤゴヤと真白な光りものが、水でも流したように左右に拡がった。それが忽ち空中高く奔騰する火焔に変った。焼夷弾が落下したのだった。

どどーン。ぐわーン。ぐわーン。

地鳴りとも、爆音ともハッキリわからない音響が、だんだん激しく鳴りだす。照空灯は、クルリと右へ旋廻すると、また急に左へパッと動いた。そして心臓の鼓動のように忙しく点いたり消えたりした。

阻塞気球が、敵機をひっかけようとヌーッと浮んでいるのが、チラリと見えた。

毒瓦斯と闘う市民の群

――昭和×年十一月、帝都の新興街、新宿附近にて――

「純ちゃん。まだ云って来ないネ」

少年団の天幕の中に、消灯用の竿竹を握っている少年が云った。

「もう来る時分なんだが……」と相手の少年は云った。

「でも来ない方がいいよ、そうじゃないか太郎ちゃん」

「警戒管制が出てから、もう一日以上経ったね」

「うん。警戒管制が出て、不用な電灯を消して歩いたのは昨夜の九時だったからネ」

「さっき、空襲警報がいよいよ本当に来たときは、米国空軍なんか何だいと思ったよ」

「あいつらは太平洋方面から航空母艦でやって来るわけだから、千葉県を通って来るんだネ」