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くうしゅうそうそうきょく

空襲葬送曲

海野 十三

「朝日」1932(昭和7)年5月~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 95,012 字 · 189 页

青空文庫

「はッ」参謀長は、静かに挙手の礼をすると、元の卓子へ帰ってきた。

(閣下は、どうかして居られる)

参謀長は、湯河原高級副官の姿を探しもとめたが、室内には見えなかった。

(副官までが、どうかしているナ)

ムラムラと湧きあがってくる焦燥感を、グッと抑えつけ、傍を見ると、年若い参謀は、満面を朱にして、拳を握っていた。参謀長は、はッと気を取直した。

「草津参謀」彼は一人の参謀に呼びかけた。

「帝都の火災は、どういう状況にあるか」

「はいッ」参謀は、大東京区域図をバリバリ音させて、その上に、太い指を動かした。「淀橋区、四谷区は、大半焼け尽しました。品川区、荏原区は、目下延焼中であります。下町方面は、むしろ、小康状態に入りました」

「放送局との連絡は、ついたろうか」

「無線連絡が、もう間もなく恢復するでありましょう」

「空中襲撃の解除警報を出す用意は、出来ているな」

「はいッ。すこし、困難はありますが、やれる見込みです」

「では、閣下に、お願いして見よう」

参謀長は、又立って、司令官の前に出た。

「閣下、解除警報を出したいと考えます」

「解除警報!」司令官は、大きく眼を開いた。「まだ早すぎる。