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くうしゅうそうそうきょく

空襲葬送曲

海野 十三

「朝日」1932(昭和7)年5月~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 95,012 字 · 189 页

青空文庫

「君が働いている避難所へなら、何十人でも何百人でも、爺さん婆さんを拾ってゆくよ」

「そして、日本が戦争に勝って、そのとき幸運にも、あたし達が生きていたら……」

「生きていたら……」

「そのときは、大威張りで、あんたの所へ行くわ」

「ふうーん」

「あんた、約束して呉れる?」

「条件がいいから、約束すらァ」

「まア、いやな人ね」

暗闇の中の男女の声は、パタリとしなくなった。

暗闇の千葉街道を、驀地に、疾走しているのは、世田ヶ谷の自動車大隊だった。囂々たる轍の響は並木をゆすり、ヘッド・ライトの前に、濛々たる土煙をあげていた。

「もう七時を廻ったぞ、山中中尉」

そういったのは、先導車の中に、夜光時計の文字盤を探っている将校の一人だった。

「那須大尉どのは、この車で、先行されますか」隣りにいた将校が、尋ねた。

「先行したいのは、山々だが、本隊との連絡が、つかなくなるのを恐れる」

「なにしろ、電灯器具材料を積んでいますから、四十哩以上の速度を出すと、壊れてしまう虞れが、あるのです」

「兎に角、弱ったね。すこし準備が、遅すぎたようだ」

「ですが、目的地の市川へは、八時までには充分着きますから、アクロン号の襲来するのが、十二時として、四時間たっぷりはございますですが」