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くうしゅうそうそうきょく

空襲葬送曲

海野 十三

「朝日」1932(昭和7)年5月~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 95,012 字 · 189 页

青空文庫

「うん」

真弓が外出の支度に、鳥渡帯を締め直していると、奥の間から、

「鳥渡、待ってくれんか」

と声をかけたのは、浩と真弓との父親だった。やがて、建てつけの悪い障子を、ガタガタと開いて、ぎごちない恰好で現れたのは、今年五十九歳になる、両眼の不自由な老父だった。

「お父さん、危いわよ」

真弓が立って、気の毒な父の手をとった。

「お祖父ちゃん。先刻、大きな自動車が二つも続いて通ったよ。そいでネ、綺麗な箱を、おっことして行ったんだけど、母アちゃんがいけないって、とっちゃったよ」

「おお、そうか、そうか」盲目の祖父は、三吉の声のする方へ手を伸ばした。「三坊、お祖父さんのお膝の上へおいで」

「お父さん、どうかしましたか」浩が怪訝な眼を見張って尋ねた。

「おお、浩も、真弓も、聞いて貰いたいことがあるんだ。外でもないが、いよいよアメリカの飛行機が、この浜の上へ沢山攻めてくるということだが、聞けば、監視に立つ人数が足りないと、町長さんの話じゃ。何でも、防空監視哨というのは、眼と耳とが確かならば勤るそうじゃが、其処で考えたことがある。お前達も知っているとおり、わしは元、海軍工廠に勤めていたものの、不幸にもウィンチが切れ、灼鉄が高い所から、工場の床にドッと墜ち、それが火花のように飛んで来て眼に入り、退職しなけりゃならなくなって、それから