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くうしゅうそうそうきょく

空襲葬送曲

海野 十三

「朝日」1932(昭和7)年5月~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 95,012 字 · 189 页

青空文庫

草津大尉は、前方を注視しながら、独言のように云った。

「いやそれは二人の女性の手柄なんです。一人は危険を覚悟で『狼』の身辺につきまとっている紅子というモダン娘、もう一人は、紅子の密書を拾って逸早く僕のところへ通報して寄越した真弓という若い女」

「ほほう、密書を拾って通報したのは女性なのかい。しっかりした女だなア」

「……」探偵は無言で微苦笑をした。「僕は結局大した働きもしませんでしたよ。磯崎のジュラルミン工場のオヤジが、狼であることを偶然発見したこと位です」

「あれは特筆すべきお手柄だったが、よく判ったものだね」

「草津大尉どの。太平洋戦争の其後の模様はどうなりました?」

「偵察機隊が火蓋を切ったそうだ。海軍の策戦が図に当って、敵軍は稍疲れが見えるそうだ。しかし勝敗はまだどこへ行くとも判っていない。だが少くとも戸波博士を、ここ一二時間の裡に奪還できない限り、帝国の勝算は覚束ない」

「先生を悪人が殺すようなことは、無ぇでしょうか」

山太郎が又心配した。

このとき前方に注目していた帆村探偵が、突然叫んだ。

「草津さん、妙なものが、向うからやって来ますぞッ」

「ほほう、ありゃ牛乳運搬自動車らしいな」