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くうしゅうそうそうきょく
空襲葬送曲
海野 十三
「朝日」1932(昭和7)年5月~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 95,012 字 · 189 页
「ところが大尉どの、御覧なさい、牛乳車の癖に莫迦にスピードを出していますよ」
「五十哩は出していますよ」運転手が云った。「すこし危いですが、この調子でつっぱしらせてようございますか」
「構わん、やれッ」
「承知しましたッ」運転手は巧みに把手を操った。彼の頸筋には、脂汗が浮んで軈てタラタラ流れ出した。
距離はだんだん迫って来た。
二千メートル、千メートル、五百メートル……。
「呀ッ、『狼』の奴だ!」帆村が躍りあがって叫んだ。
「なに、ウルフかッ」大尉は叫んだ。「後藤、力一杯ブレーキをかけて左側の水田の中へ自動車を入れろッ」
そう命令すると、大尉は座席の横から一抱えもある鎖を、車外に抛り出した。途端に、車体はぐぐッと曲った。そして、大きな水煙りをあげると、どすンと水田の中に、急停車した。
「それッ、皆、飛び出せッ」
出てみると、そこから三百メートルと距っていないところに「狼」の乗っていた牛乳自動車が車輪に釘の出ている鎖を搦せ水田の中に頭部を突入して動かなくなっていた。
駈けつけてゆく裡に、牛乳車の函車が内からパクリと開いて牛乳缶の代りに、四五人の怪漢が、ドッと飛び出して来た。