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くうしゅうそうそうきょく

空襲葬送曲

海野 十三

「朝日」1932(昭和7)年5月~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 95,012 字 · 189 页

青空文庫

「上海に市街戦起る、○○師団、先ず火蓋を切る。米国空軍は杭州地方に集結」

東京市民は、我が軍に関するニュースの少いのに不満であった、それは恐らく、全国民の不満であるに違いなかった。ことに、太平洋方面に戦機を覘っている筈の、帝国海軍の行動について、一行のニュースもないのを物足りなく思った。

どこからともなく、流言が伝わり出した。東京市民の顔には不安の色が、次第にありありと現われて来た。誰しも、同じような云いたいことを持っていたが、云い出すのが恐ろしくて、互に押黙っていた。

国民の不安が、もう抑えきれない程、絶頂にのぼりつめたと思われた其の日の夜、東京では、JOAKから、実に意外な臨時ニュースの放送があった。

警戒管制出ず!

JOAKのある愛宕山は、東京の中心、丸の内を、僅かに南に寄ったところに在った。それは山というほど高いものではない。下から石段を登ってゆくと、ザッと百段目ぐらいを数える頃、山頂の愛宕神社の前に着くのだった。毬栗を半分に切って、ソッと東京市の上に置いたような此の愛宕山の頂きは平らかで、公園ベンチがあちこちに並び、そこからは、東京全市はもちろんのこと、お天気のよい日には肉眼ででも、房総半島がハッキリ見えた。