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くうしゅうそうそうきょく

空襲葬送曲

海野 十三

「朝日」1932(昭和7)年5月~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 95,012 字 · 189 页

青空文庫

波二さんも、気をつけてネ……」

少年は、高いところに点いている電灯の電球を、ねじって消すために、長い竿竹の尖端を、五つほどに割って、繃帯で止めてある長道具を担ぐと、急いで駈け出していった。

「あれは、何処の子だい」長造が訊いた。

「あれは、ほら」お妻は首をふって思い出そうと努力した。「亀さんちの、区役所の用務員さんで、そうそう、浅川亀之助という名前だった、あの亀さんの末ッ子ですよ」

「おォ、おォ、亀之助ンとこの子供かい。どうりで見覚えがあると思った。暫く見ないうちに大きくなったもんだネ」

「あの惣領息子が、岸一さんといって、社会局の事務員をしていたのが、いまの話では、立川飛行聯隊へ召集されたんですって」

「ふン、ふン、岸ちゃんてのは知っているよ。よく妹なんか連れて、うちの清二のところへ遊びに来たっけが、もうそうなるかなア」

そこへまた、ノコノコと入って来た人影があった。それは、古くから浅草郵便局の集配人をやっている川瀬郵吉だった。

「下田さん、書留ですよ」

「おう、郵どん、御苦労だな」長造が、古い馴染の集配人を労った。「判子を、ちょいと、出しとくれ」

「あい」お妻は、奥へ認印をとりに行った。