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くうしゅうそうそうきょく

空襲葬送曲

海野 十三

「朝日」1932(昭和7)年5月~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 95,012 字 · 189 页

青空文庫

波二と呼ばれた少年は、鳥渡顔を赤くした。「こっちから見ると、電灯の影で判らなかった」

「あら、そう。御苦労さまだわネ。うちの素六もさっきに出掛けましたよ」

「僕も一生懸命、やっているんですよ、おばさん。この前の演習のときと違って、しっかりした大人は大抵出征しているんで手が足りないの」

「貴方の家の兄ちゃんも、出征なすったんだってネ」

「兄さんは立川の飛行聯隊へ召集されて行ったんだけれど、どうしているのかなア、その後なんとも云って来ないんです」

「心配しないで、観音さまへ、お願い申しときなさい。きっと守って下さるから……」

お妻も、同じような思いだった。二男の清二が潜水艦に乗組んで演習に出たきり、消息の知れないこと、もう四十日に近い。彼女は、母の慈愛をもって、幼時から信仰を捧げている浅草の観世音の前に、毎朝毎夕ひそかに額き、おのれの寿命を縮めても、愛児の武運を守らせ給えと、念じているのだった。

「誰の家も、同じようなことがあるんだネ」波二少年は暗い顔を、強いてふり払うように云った。「ンじゃ、僕もしっかり働きます、さようなら、おばさん」

「ああ、いってらっしゃい。