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くうしゅうそうそうきょく

空襲葬送曲

海野 十三

「朝日」1932(昭和7)年5月~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 95,012 字 · 189 页

青空文庫

向うの集団は、二手に別れた。一隊は、局舎の周囲を、グルグル廻っては、しきりに発砲していた。他の一隊は、地に匍い局舎を掩護物にして、ジリジリと、こっちを向いて進撃してきた。

少尉の部下は、イライラしてきたが、少尉は、まだ発砲の号令を出さなかった。

(たしかに、おかしい。あの兵士等の、鉄冑の被り様は怪い。姿勢も、よろしくない。うン、これは、真正の軍隊ではない。それならば、よオしッ)

「撃ち方用意!」東山少尉は、マスクを取ると、大声に叫んだのだった。「敵は陸軍々人の服装をしているが、不逞群衆の仮装であると認める。十分に撃ちまくれ、判ったな。――左翼、中央の両隊の目標は、敵の散開線、右翼は横を見て前進、放送局の守備隊と連絡をとれイ。撃ち方、始めッ」

猛烈な機関銃隊の射撃ぶりだった。

敵は、最初のうちは、明かに、狼狽の色を見せたが、暫くすると、勢を盛返し、手榴弾を、ポンポンと擲げつけては、機関銃を、一門又一門と、破壊していった。

東山少尉は、振笛を吹いて、残りすくない部下を、非常召集した。だが、敵は多勢で、服装に似ず、戦闘力は強かった。局舎守備隊も苦戦と見えて、連絡は、どう頑張っても、とれなかった。