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くうしゅうけいほう

空襲警報

海野 十三

「少年倶楽部」別冊付録、大日本雄弁会講談社、1936(昭和11)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,838 字 · 92 页

青空文庫

「第○野戦高射砲隊ハ、既定計画ニ基キ陣地ヲ占領シ主トシテ高田市附近ノ防空ニ任ゼントス。各中隊は速カニ出発シ、第一中隊ハ鴨島ニ、第二中隊ハ柳島ニ、第三中隊ハ板倉橋附近ニ、陣地ヲ占領スベシ。終」

いよいよ出動命令が発せられたのである。川村中尉は、固い決心を太い眉にあらわして、おごそかに挙手の敬礼をした。そして廻れ右をすると、活発な足どりで連隊長の室を出ていった。

「高射砲第三中隊あつまれ!」

中尉の号令を待ちかねていたかのように、部隊はサッと小暗い営庭に整列した。点呼もすんだ。すべてよろしい。そこで直ちに部隊は隊伍をととのえて、しゅくしゅくと行進をはじめた。

市街を南へぬけて左へ曲ると、そこは板倉橋だった。――中隊は橋を中心として左右に散って陣地をつくった。――聴音機の大ラッパは暗黒の空に向けられ、ユラリユラリと重そうな頭をふった。敵機の来る方向はいずこだろう?

不気味な夜は、音もなく更けていった。

午後九時になると、とうとう非常管制が布かれた。サイレンの唸、ラジオの拡声器から流れてくるアナウンサーの声。「空襲、空襲!」と叫びながら走ってゆく防護団の少年。